果てしなき需要創造へのチャレンジの軌跡
僕達のもう一つのプロジェクト”X”
(第3巻第1号) 
もみもみ号発売昭和年50(1975)(その1)  
この商品は椅子に座りスイッチを入れるだけで心地よく好きなだけマッサージしてくれ、指圧効果も得られるとご愛用者も多いこの商品。しばしば名士のお住まい拝見番組を見ていると画面の片隅に登場したりして、ああ使って頂いてるんだな、などと嫁入い娘を垣間見るような思いをさせてもらっている。
 今では私が松下電工に入社し、私が開発を押し進めた商品の中では最大の稼ぎ頭の商品となり、業界はもとより、世間においても関心の的となる立派な市民権を得て、人々の日々の疲れを癒す最良の手段として日常生活に定着してきている。

 私の手を離れて10年近くなり、商品も随分立派になったというか変貌してしまって、今ではリアルプロという商品名に変わっている。この商品名はこの商品が世の中に認められる重要なコンセプトを表現しているが、本当にその名に恥ずかしくない商品を後輩たちは作っているのだろうか、お客様に人々に愛される商品にしようと努力を続けてくれているのには違いないが、その考え方や方向は間違っていないか。いつまでも気がかりなテーマなのである。

現行商品
・Nationalリアルプロ
 EP3510
 松下電工におけるマッサージ椅子の開発は大きく三つの時代に分けることができる
マッサージ椅子時代 1968〜1975
マッサージ椅子もみもみ時代 1975〜2000
リアルプロの時代(現行商品) 2000〜
●マッサージ椅子時代
マッサージ椅子の時代とは世間で云う「あんま椅子」の市場に市場参入を果たした頃で、商品にも特長は無く、ただトレードマークのNationalを売り物に電器業界における流通組織を利用して販売をしていた時代である。それこそ鳴かず飛ばずの何年かを経て、本商品は地方(東北)の営業部長だった宗政武郎氏が事業部長として電器事業部に赴任し、「もみもみ」というご存知の商品に脱皮させたものである。

 この商品は私が基本発明をしたわけではない。また松下電工が「もみもみ」という商品を突如開発したのではない。この商品は昭和30年代後半あたりから銭湯などの脱衣場で使われる椅子式マッサージ機として市場に登場した。
 松下電工では昭和43年頃から、このマッサージいす事業をスタートさせた。

松下電工で初期に作られた椅子式マッサージ機(昭和43、4年ごろ)
(松下電工が最初に発売した機種ではない。これは2号機で、
この前に30台だけ、作って発売した木製の製品が最初のマッサージ椅子があるが、
もう手元にもその写真は残っていない)

全く芽が出なかったマッサージ椅子時代を代表する商品、開発投資だけが、重くのしかかっていた。
 
 後発の弱みを補うため、陰電位治療器を組み合わせたマッサージ椅子なども発売したが、販売は伸びず、毎月数百台を生産しているに過ぎなかった。商品別に見た採算は赤字事業続きで、さっぱり芽がでないので、途方にくれていた。
 そのとき、最後にたどり着いたのが「もみもみ」と命名されたこの商品だったわけである。

●訪れた転機ー「この商品を男にせよ」

  松下電工は早くから事業部制をとり、事業単位の経営は事業部長に任せる体制を布き、業績が悪いと容赦無く責任者を交代させている。昭和48年のそのときも事業部長の交代があり、新たに営業部長あがりの宗政武郎氏が事業部長として着任した。事業部の業績低迷は大抵売上低迷に端を発している。だから宗政氏も何か大きな手を一つ打つ必要があった。そこで着目したのがマッサージ椅子だった。ただこの商品が良い商品であるのに売れていない、だから力を入れて売る、などからそう決めたのではなかった。当時の商品は良くない、しかし、肩こりや腰痛で困る人は結構多いし、疲れを溜めず、毎日ちょっとした疲れほぐしで披露回復を図ることは健康維持に重要だ。それにこれを解決する手段としてこれほど良い商品はない。一家に1台これを普及することは社会的にも大変重要な仕事だ、こういう信念から「この商品を男にせよ」こう指示を下したのである。

 この人の指示は簡単明瞭、具体的であとはいっさい細かいことを言わない。
部下にまかせて結果を待つ風である。こういうのせ方に弱い職人気質、私はそれならその夢実らせてやろうじゃないか、そう決意を固め、早速、以前からお世話になっていた一人の外部デザイナーを訪ね、相談にのってもらうよう協力をお願いしたのであった。(当時は殆どが中間責任者の私一人の即断即決で進められる、そんな職場の雰囲気が同業他社にも恐れられる開発パワーになっていた)

次号に続く
ITmedia +D
Life styleが ”もみもみ”の歴史と題してもみもみを特集している。
滋賀県彦根市のとある工場。そこには、「モミモミ歴品館」という、ちょっと怪しげな名前の場所があった。
 ……ところで「ロッキンローラー」って、憶えてる?
http://plusd.itmedia.co.jp/lifestyle/articles/0612/05/news005.html
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